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葬儀保険「千の風」のコラムのページをご覧いただきありがとうございます。
ご遺体を棺に納める納棺は30分から1時間程度で終わる儀式ですが、これはご遺体と向き合える死後のチャンスです。納棺の流れや儀式の意味を知ることで「あのときこうしておけば…」という後悔も少なくなるでしょう。
目次
納棺とは、故人のご遺体を清め、死装束や死化粧をほどこしたうえで棺に納めることです。「納棺の儀式」とも呼ばれ、一般的にはお通夜の前におこなわれます。
一度棺に納めたご遺体を再び取り出すことはありませんので、故人と直接触れ合えるのは納棺の儀が最後になります。死装束を着せる、死化粧をする、棺に納めるなどの儀式をとおして故人への思いを伝えましょう。
人が亡くなると、その事実を役所に届け出なくてはいけません。そのためにはまず、医師が作成した死亡診断書、または検察医が作成した死体検案書を入手します。
死亡診断書や死体検案書とともに死亡届を提出します。死亡届はその事実を知った日から7日以内に役所に提出しなければなりません。
このとき対応できる役所は以下のとおりです。
これら以外の役所に出向いても受付できないので注意してください。基本的に死亡届は、故人の親族や同居人のみ提出可能です。
死亡届が受理されたら火葬許可証が発行されますので、火葬前に火葬場の管理事務所に提出しましょう。また死亡診断書や死亡届は一度提出すると原本が戻ってこないので、保険金の請求をされる方は必ずコピーをとってください。
死亡届の提出についてや、火葬許可証について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
参考:「死亡届は誰がどこに提出する?書き方や注意点を徹底解説!」
参考:「火葬許可証とは?発行の流れやポイント、紛失時の対処法を解説」
故人と関係が深かった友人・仕事の関係者・地域の方などに早急に訃報の連絡を入れます。基本的な連絡方法は電話ですが、状況によってはメールやSNSを使うことも増えています。
ただしメールでは相手が読んでくれたのかどうか確認できないため、確実に伝えるには電話がベストでしょう。社会的な立場が高い方や交友関係が広かった方は、新聞に死亡広告を掲載してもらう方法もあります。
訃報の連絡には優先順位があり、親族が最優先です。次に友人・知人・仕事関係者、最後に近所に住む方々になります。
訃報の連絡について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
参考:「訃報とは?訃報を流すタイミングやメールで返信する場合の注意点を解説」
ご遺体は放置するとどんどん腐敗してしまうため、できるだけ早く葬儀社と打ち合わせをおこない、遺体の搬送手続きや、葬儀についての流れや日程を決めなければなりません。
都市部は火葬するにも順番待ちが発生するため、できるだけ早い葬儀社への連絡、打ち合わせが重要です。
搬送場所が決まったら遺体を搬送します。搬送の際には死亡診断書を一緒に持っていくと何かあったときに安心です。
自宅で安置する場合は枕飾りを用意します。この枕飾りには仏式と神式があり、葬儀にお坊さんが来るのか、それとも神主さんを呼ぶのかで変わってきます。
仏式の場合は白い布をかけた低めのテーブルに、香炉・燭台・花立てを置くのが基本です。なにを供えるかは地域や宗派により違いがあるため、事前に打ち合わせをしておくと無難でしょう。
神式の場合は白木八足のテーブルの上の両脇に榊を飾り、塩や洗ったお米、水などを供えます。最近は住宅事情から、枕飾りが省略されるケースも増えているようです。
死に水や末期の水をとるとは、故人の口元をガーゼや脱脂綿で潤します。故人の口のなかには無理やり水を含ませる必要はありません。
配偶者、子ども、親、兄弟姉妹、子供の配偶者など、近親者から儀式をおこないます。医療機関などですでに儀式をおこなっている場合は省略可能です。
納棺の前に、親族が故人の身体を桶のお湯で洗う湯灌という儀式があります。今は葬儀社や湯灌師が、専用の設備でおこなうケースがほとんどです。
設備がない場合は湯灌を省略し、アルコールで身体を拭き清める清拭を採用することもあります。
湯灌を希望する場合は事前に葬儀社に相談しておくとよいでしょう。湯灌も清拭も故人の生前の穢れや煩悩・苦しみを洗い清めるための儀式です。
死化粧は、治療中や臨終時の苦しみを消すために身なりを整えることです。男女問わずおこなわれます。
湯灌の儀式後に髪をドライヤーで乾かし、顔色が悪い場合はファンデーションやコンシーラーなどで肌色を整えます。口紅やチークを足すと明るい印象になり、遺族の心も癒されるでしょう。
男性の場合はひげを剃り、爪が伸びている場合は整えることもあります。頬がこけてやつれた印象を与える場合は、口のなかに綿を含ませるなどして生前の状態に近づけます。
納棺の前に、白一色で統一された死装束を着せます。葬儀社が用意した衣装を、スタッフや納棺師が着せるのが一般的です。
仏教では死後に浄土に旅立つと考えられており、遺体には三角布を使った巡礼姿が施されていました。現代では死装束のみ採用されているようです。
最近では故人が好きだった服やエンディングドレスなど、葬儀用に用意された衣装を着るケースも増えています。故人の生前の希望があれば、それを優先させることが供養につながるでしょう。
納棺は力のいる儀式のため、遺族だけではなく葬儀社のスタッフや納棺師と呼ばれる担当者が納棺をおこなうケースもあります。
納棺師とは、ご遺体を棺に納めるための準備や納棺そのものの知識をもつエキスパートです。葬儀社のスタッフや納棺・湯灌専門の会社から派遣されることもあります。
納棺師は死装束や死化粧だけではなく、死体の防腐処理(エンバーミング)や死後硬直したご遺体のマッサージ、外傷部分のカバーなど柔軟に対応できることが多いです。
故人が愛用していた物や好きな食べ物、思い出の品など、棺のなかに入れるものを副葬品と呼びます。あの世でも楽しく暮らせるようにとの願いが込められています。
ただし、どのような副葬品でもよいわけではありません。副葬品で納めてよいもの、納めてはならないもの、事前に届け出が必要なものがあります。
以下、例を挙げてみていきましょう。
副葬品として入れてよいものには、故人が好きだったお花や故人に宛てた手紙、寄せ書き、お気に入りの洋服、着物、思い出の写真、ぬいぐるみなどがあります。生前に愛用していたタバコや櫛、書籍も可能です。
ただし、写真を副葬品にする場合は、存命中の方が写っていないかどうか気をつけてください。もし存命中の方が写っている場合、縁起が悪い、一緒にあの世に連れていかれるなど不快な気持ちにさせる恐れがあります。
燃やすと有害物質が発生するもの、爆発する恐れのあるものは避けましょう。ライターやスプレー缶、ビニール製品やプラスティック製品は不適です。ほかにもゴルフクラブや釣り竿、スキーやスノーボードの板なども大きさや金属部分が燃えにくく問題となることがあるため避けた方がよいでしょう。皮革製品も避けておくと無難でしょう。
これら用品は火葬の際に燃えにくかったり、燃え残りが遺骨を汚したり、換気設備の故障につながる恐れがあります。
ほかにも金属製品やガラス製品、本物のお金も不適です。お金を入れたい場合はレプリカであれば問題ありません。
ぬいぐるみや書籍、故人が好きだった果物は副葬品として問題ありませんが、場合によっては事前に届け出が必要なケースもあります。それはあまりにも大きなぬいぐるみや厚い書籍の場合です。
たとえ好物であっても、大きなメロンやスイカを丸ごと燃やすと爆発する恐れもあります。フルーツは細かく切ることで爆発を防げるため、葬儀社のスタッフに副葬品の内容をチェックしてもらうとよいでしょう。
ご遺体と副葬品を納めたら、棺にふたをして合掌します。地域によってはこのタイミングでふたに釘を打つこともあるようですが、出棺まではふたを置くだけで固定しないのが一般的です。
ふたをしたタイミングで僧侶が納棺経をあげる場合もあります。地域や宗派によって儀式の内容が異なるので注意してください。
納棺の一般的な所要時間は約30分~1時間程度ですが、地域やご遺体の状態によっては2時間ほどかかることもあります。納棺は自宅、または葬儀場でおこなうケースがほとんどです。葬儀をおこなう場所により、地域の公民館等で納棺することもあります。
納棺はお通夜や告別式の前におこなわれ、そのままお通夜や告別式へと移行するのが一般的です。特にお通夜の前に納棺の儀をすませるケースが多数派のようです。
納棺の費用は、湯灌と清拭で差がつきます。清拭はアルコールなどで故人の身体を清める簡易式のため約2~5万円ですが、湯灌は浴槽に故人を入浴させるため約8~10万円の費用がかかります。
葬儀社によっては機材やスタッフの関係で清拭しか選べないケースもありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。
納棺の儀式は、故人と親しい配偶者や子ども、兄弟姉妹、親しい友人などが立ちあいます。基本的には親族がメインですが、地域や故人の希望によっては友人や地域の方が加わることもあるようです。
親族でも遠方の方は参加が難しいケースもあり、必ず親族が立ちあわなければならないという決まりはありません。
納棺の儀は多くの場合、自宅か葬儀場の場面で想定されます。自宅で納棺をおこなう場合は平服でもよいとされています。ただし自宅でお通夜となれば、喪服に着替えなければなりません。
葬儀場で納棺に立ち会いその日のうちにお通夜をおこなう場合は、最初から喪服を着用するのが無難です。
納棺の儀だけではなくお通夜や告別式で身に着けないほうがよいものは、男性であれば殺生をイメージさせる革製品、派手なアクセサリーです。女性も派手なメイクはNGです。2連、3連のアクセサリーは不幸が重なるとイメージされるため1連のネックレスにしましょう。
お通夜はもともと遺族が故人を夜通し見守り、線香や灯明をともし続ける儀式でした。今は読経や食事を3~4時間ですませる「半通夜」が広く浸透しています。
お通夜は葬儀の前夜に、親族や友人、知人、近所の方が集まり故人の死を惜しむ大事な儀式です。読経、お焼香と続き、僧侶の法話紹介、喪主の挨拶などがおこなわれます。お通夜は宗教儀式がメインですが、終了後は弔問客や僧侶、準備を手伝ってくれた方にお酒や食事を振る舞います。
お通夜について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
参考:「お通夜とは?お葬式との違いから流れやマナーについて解説」
キリスト教でもカトリックの場合は納棺に神父が立ち会い、遺体と棺を聖水で清め神父が祈りを捧げます。納棺が終わると故人の手を胸の上で組み、棺には十字架やロザリオを納めます。
プロテスタントの場合カトリック同様、牧師が故人のために祈りを捧げますが、このとき讃美歌を歌い聖書を読むこともあります。プロテスタントでは生花以外の副葬品は入れない方がよいとされており、納棺時には宗派のルールに従うのが無難です。
納棺は故人があの世へ安心して旅立てるよう願い、故人の死を受け入れるための大事な儀式です。納棺でおこなわれる湯灌や清拭、死装束や死化粧などの意味を知れば、より深く故人へ思いを伝えることができます。
納棺にかかる費用も、湯灌か清拭か、また高額な生地を使った死装束にするか、故人が愛用していた洋服を選ぶかでも変わってきます。後悔しないお葬式のために、納棺にかかる費用もチェックしておきましょう。